新潟でギターを弾き始めて、もう20年になります。
長谷川拓也です。
平日はITインフラの仕事をしていて、週末は地元のバンドでギターを担当しています。
3年前、ずっと憧れだったSuhrのギターを買いました。
店で試奏したとき、あまりの音の良さに即決。
でも自宅に持ち帰って自分のアンプにつないだら、あれ、なんか違う。
あの感動は何だったんだ、と本当にショックでした。
結論から言うと、ギターが悪かったわけではなく、試奏環境と自宅の環境が違いすぎたのが原因でした。
それ以来、試奏のときは環境を意識するようになり、買い物で後悔することがなくなりました。
この記事では、特にハイエンドギター(30万円以上のクラス)を検討している方に向けて、試奏環境がなぜ大事なのか、何をチェックすべきなのかをまとめています。
地方在住のギタリストならではの視点も入れていますので、参考にしてもらえたらうれしいです。
目次
店で弾いた音と自宅の音が違う問題
大型アンプと小型アンプの差
楽器店の試奏コーナーにあるアンプは、だいたい店の標準機です。
Fender Twin ReverbやMarshall JCM2000のような大型チューブアンプが並んでいることが多い。
一方、自宅で使うのは10W〜20Wクラスの小型アンプだったり、マルチエフェクターにヘッドフォンという人もいるでしょう。
僕も自宅ではBoss KATANA miniとヘッドフォンが基本です。
出力もスピーカーサイズも違えば、音の印象は当然変わります。
店の40Wチューブアンプで弾いて「太くて抜ける音だ」と感じたギターが、自宅の小型アンプでは「もっさりして抜けない」と感じることは珍しくありません。
FenderのアンプでもTwin ReverbとBlues Jr.では音の傾向がかなり違いますし、Marshall系は機種によってツマミの配置すら異なります。
店のアンプが自宅と同じ条件になることは、まずないと思ってください。
僕の場合、最初のSuhrで失敗してからは、試奏のとき必ず「自宅のアンプでどう鳴るか」を想像するようにしています。
店のチューブアンプで弾いた後、できればヘッドフォンアウトやマルチエフェクター経由でも音を出して、条件を変えて聴き比べる。
ひと手間かかりますが、これをやるだけで「持ち帰ってがっかり」がほぼなくなりました。
空間の広さと反響
意外と見落としがちなのが、部屋そのものの影響です。
楽器店は天井が高く、フロア全体に音が広がります。
自然と残響も多くなるので、弾いていて気持ちいい。
自宅の6畳間だと、音が壁に跳ね返ってきて、変な周波数が強調されることもあります。
同じギター、同じアンプでも、部屋が違えば聞こえ方は変わる。
この「空間の差」を計算に入れずに買うと、家で弾いたときにがっかりする原因になります。
店で「めちゃくちゃ気持ちいいリバーブ感」だと思っていたものが、実は部屋の自然な残響だった、なんてこともあります。
対策としては、防音室や個室ブースのある店を選ぶこと。
閉じた空間で弾くと、自宅に近い条件で音を聴けるので判断のブレが減ります。
ハイエンドギターほど環境差が出やすい理由
5万円のギターと30万円のギターでは、環境による印象の振れ幅が違います。
ハイエンドギターの魅力は、ピッキングのニュアンスがそのまま音になるところです。
たとえばSuhrのギターは、SSC(サイレント・シングル・コイル)回路によるノイズの少なさ、CNCによる精密なネック加工、厳選された木材の組み合わせで、指先のタッチがダイレクトに反映されます。
裏を返すと、アンプや空間の特性もダイレクトに拾うということです。
安価なギターは良くも悪くも「鳴らない」部分があるので、環境が変わっても印象がそこまで大きく変わりません。
ハイエンドは違います。
良い環境なら最高の音を出すし、合わない環境だとポテンシャルを発揮しきれない。
Gibson Custom Shopのような、ヴィンテージギターの質感を現代の技術で再現しているブランドも同じです。
Gibson Japan公式サイトを見ると、Murphy Labのエイジング処理や専門スタッフによる木材の厳選など、繊細な工程を経て1本1本作られていることがわかります。
そこまでこだわって作られたギターの真価を、試奏環境が合わないせいで見逃してしまうのはもったいない。
だからこそ、ハイエンドギターを試奏するなら、環境にこだわる必要があるんです。
個体差という見えない変数
もうひとつ、ハイエンドギターには個体差があります。
同じモデル、同じスペックでも、木材の個性で鳴り方が微妙に違う。
Tom Anderson Guitarworksのようにカスタムメイドがメインのブランドでは、CNCルーターで0.01mm単位の精密加工を行いつつ、最終セットアップは熟練クラフトマンが手仕上げしています。
それでも、木は天然素材なので1本ごとに個性が出る。
だから、できれば同じモデルを複数本弾き比べたい。
それが可能な環境かどうかも、試奏場所を選ぶときの判断材料になります。
理想的な試奏環境の条件
これまでの経験で「ここは試奏しやすかった」と感じた場所に共通していた条件をまとめます。
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 防音・遮音された空間がある | 周囲の雑音や視線を気にせず、音に集中できる |
| チューブアンプとデジタルアンプの両方がある | 1種類のアンプだけでは評価が偏る |
| 湿度が管理されている | ギターのコンディションが安定している証拠 |
| 同モデルや同価格帯を複数本試せる | 個体差を確認できる |
| 事前予約で落ち着いて弾ける | 時間を気にせずじっくり比較できる |
湿度管理は見落としがちですが、実はかなり大事なポイントです。
木材で作られたギターは湿度に敏感で、乾燥しすぎるとネックが反りやすくなり、湿度が高すぎると音がぼやけることがあります。
楽器専門店の中には、業務用の加湿器で年間を通じて湿度50〜60%を維持している店もあります。
そういう店に置かれているギターは、コンディションが安定しているので試奏の結果も信頼しやすい。
そしてやはり大事なのが、アンプの選択肢です。
クリーンが得意なFender系のアンプだけで試奏すると、歪ませたときの音がわからない。
逆にMarshall系のハイゲインアンプだけだと、クリーンの繊細さが見えてこない。
最近はKemper PROFILER STAGEやLINE6 Helixのようなデジタルプロセッサーを試奏用に置いている店もあります。
これらは1台で複数のアンプモデルを切り替えられるので、短い時間でもいろいろな条件のテストができて助かります。
Kemperのプロファイリング技術は、実際のチューブアンプのサウンド特性をキャプチャして再現する仕組みです。
Kemper公式の製品ページにも記載がありますが、最大18個のエフェクトを同時に使えるので、自宅の環境に近い条件でのテストも可能になります。
試奏用にチューブアンプだけ置いている店もまだ多いですが、個人的にはデジタル機材も併用できる店を選ぶのがおすすめです。
自宅でマルチエフェクターやアンプシミュレーターを使っている人なら、店でも似た条件で弾いてみないと判断がずれます。
試奏で必ずチェックしたいポイント
試奏の時間は限られています。
何を確認するか、事前に決めておくのが大事です。
僕が毎回やっているチェック項目を共有します。
- オープンコード(E、D、Gなど)を鳴らして全体の響きとピッチ感を確認する
- ハイポジション(12フレット以降)で弾いて、ネックの反りやビビりがないか確かめる
- 自分の得意なフレーズを弾いて、「響かないフレット」「音が膨張する帯域」がないか探す
- クリーンとクランチ、できればハイゲインでも音を出す
- ボリュームノブを絞ったときの反応を見る(ハイエンドは絞ったときの変化が大きい)
- ネックの握り心地、ボディの重さ、座って弾いたときのバランスも忘れずに
もうひとつ、予算の上下も含めて弾き比べることをおすすめします。
たとえば予算が30万円なら、20万円台と40万円台のギターも1本ずつ弾いてみる。
価格帯による違いが体感でわかると、自分の予算で何が得られるのか、もう1ランク上にいく価値があるのかが判断しやすくなります。
よくやりがちな失敗は、店員さんの前で緊張して、いつもと違うフレーズを弾いてしまうこと。
試奏は誰かに聴かせるためのものではないので、自分の手癖フレーズでいいんです。
むしろ、弾き慣れたフレーズの方が微妙な違いに気づけます。
できれば、信頼できる楽器仲間と一緒に行くのもおすすめです。
自分では気づかない音の特徴を指摘してもらえることがあります。
僕もバンドメンバーに付き合ってもらったことが何度かありますが、「クリーンはいいけど歪ませると中域がもたつくね」みたいな冷静な意見をもらえて助かりました。
もし時間が許すなら、日を変えて2回以上弾きに行くのがベストです。
1回目の興奮が冷めた状態で弾くと、冷静に判断できます。
試奏時の細かいチェックポイントはエレキギター博士のこちらの記事にも整理されているので、初めて高額ギターを買う方は目を通しておくといいと思います。
地方でも妥協しない試奏環境を見つけるには
東京や大阪なら、御茶ノ水や心斎橋に行けば選択肢はいくらでもあります。
でも地方都市だと、ハイエンドギターの在庫がある店自体が少ない。
僕は新潟市に住んでいるので、この悩みはずっと抱えてきました。
ただ、最近は状況が少しずつ変わってきていると感じます。
たとえば島村楽器では、他店舗の在庫を指定店舗に取り寄せて試奏できるサービスがあります。
1本あたり5,500円(税込)で最大2本まで。
購入すれば取り寄せ料金分が割引対象になるので、地方在住のギタリストにはありがたい仕組みです。
わざわざ交通費をかけて都会まで行くことを考えれば、5,500円で地元に届けてもらえるのはかなりコスパが良い。
新潟だと、島村楽器のビルボードプレイス店はKemper PROFILER STAGEやSuhr Hombre(18Wのチューブアンプ)といった試奏機材が揃っていて、防音室での試奏予約もできます。
Suhr、Tom Anderson、Mayones、G’Seven Guitarsなど取り扱いブランドも幅広い。
新潟でハイエンドギターを扱う店舗やブランドについてまとめた記事を事前に読んでおくと、取扱ブランドや試奏環境の全体像がわかるので、効率よく動けます。
地方に住んでいると「都会に行かないとまともなギターが買えない」と思いがちですが、情報を集めてから動けば、地元でもしっかり選べます。
取り寄せサービスを活用すれば、県内にいながら複数本の弾き比べも可能です。
僕自身、新潟に戻ってきた当初は「ギター買うなら東京まで行かないと」と思い込んでいました。
でも実際に地元の楽器店を丁寧に調べてみると、想像以上にハイエンドの選択肢がありました。
事前にネットで情報を集めて、扱いブランドと試奏環境を把握してから店に行く。
このひと手間が、地方でのギター選びの満足度を大きく左右します。
まとめ
ハイエンドギターは安い買い物ではありません。
だからこそ、どこで弾くか、何を通して音を出すかまで含めて「試奏」だと僕は思っています。
店のアンプで感動しても、それが自宅で再現できるとは限らない。
アンプの種類、空間の広さ、湿度管理、複数本の比較。
こうした条件を意識するだけで、買った後の満足度はまったく変わります。
20年ギターを弾いてきて、一番の教訓は「試奏で手を抜くと後悔する」ということでした。
逆に言えば、環境をちゃんと選んで納得いくまで弾けば、ハイエンドギターは本当に長く付き合える相棒になってくれます。
高い買い物をするからこそ、試奏環境にも本気でこだわってみてください。
きっと「あのとき妥協しなくてよかった」と思える日が来ます。



