単身赴任の夫に何を送るか、栄養士として本気で考えた

夫の単身赴任が決まったとき、私が最初に心配したのは仕事のことではなく、夕飯のことでした。

はじめまして、管理栄養士の向井奈津子です。
総合病院の栄養科で10年ほど患者さんの食事指導を担当し、いまは個人向けの栄養相談とレシピ開発をしながら、中学生と小学生を育てています。

栄養士なんだから即答できるでしょう、と思われるかもしれません。
実際はかなり迷いましたし、最初の仕送りははっきり失敗しました。

最初の仕送りは、冷凍庫の前で止まりました

赴任して2週間目、張り切って作りためた冷凍おかずを、保冷剤ごと詰めて送りました。

翌日、夫から届いた連絡は「冷凍庫、製氷皿でほぼ埋まってる」でした。
単身用の物件の備え付け冷蔵庫は、思っていたよりずっと小さいのです。

送ったものどうなったか
手作りの冷凍おかず5品冷凍庫に入らず、2日で食べ切るはめに
肉じゃがじゃがいもが冷凍でスカスカになった
段ボール入りの野菜使い切れず、半分を傷ませた

送る側が「これがあれば助かるはず」と考えるものと、受け取る側の台所の現実は、けっこうずれます。
私は栄養のことばかり考えて、保管場所と調理する気力のことを完全に忘れていました。

40代男性の野菜は、小鉢2皿ぶん足りていません

失敗したあと、あらためて数字を確認し直しました。

厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査によると、20歳以上の野菜摂取量の平均値は258.7gです。
男性は268.6g、なかでも40代男性は248.7gにとどまっています。

国が健康日本21(第三次)で掲げている目標は1日350gですから、40代男性は100gほど足りていない計算になります。
100gというと、ほうれん草のおひたしなら小鉢2皿ぶんくらいです。

同じ調査では、350g以上とれている人の割合も出ています。
男性全体で26.2%、40代男性では22.0%。
5人に4人は届いていません。

しかも単身赴任は、この平均よりさらに不利な環境です。
内閣府が2025年に公表した分析でも、単身世帯は二人以上の世帯に比べて外食や調理食品の割合が高いと指摘されていました。
自炊は節約効果が薄く、時間短縮が優先されるからです。

野菜が減ると、食物繊維も一緒に減ります。
40代男性の平均摂取量は18.1gですが、日本人の食事摂取基準(2025年版)が示す30〜49歳男性の目標量は22g以上です。

送るものの条件を、3つに絞りました

2回目からは、栄養価より先に「置ける・使える」を条件にしました。

  • 常温で保存できること
  • 冷蔵庫や棚を占領しない大きさであること
  • 調理も洗い物も増えないこと

この3つを満たすものだけを送っています。
具体的には、レトルトの雑穀ごはん、フリーズドライの味噌汁、乾燥わかめ、日持ちするみかん。
そして粉末タイプの青汁です。

青汁を選んだのは、私が病院時代に「野菜が食べられない患者さんの食物繊維をどう補うか」で散々悩んだ経験があるからです。
粉末なら1包が数グラムで場所を取りませんし、水に溶かすだけで洗い物も出ません。

ただ、どれでもいいとは思っていません。
私が中身を見るのは、原料の産地、農薬の扱い、香料や着色料の有無、それから収穫から加工までの時間です。
そこまで公開しているメーカーは意外と限られます。
たとえば純国産の大麦若葉を使った青汁の品質へのこだわりは、契約農家の栽培から加工までの流れが読めるようになっていて、選ぶ側としては判断材料になります。

それでも、青汁は食事の代わりにはなりません

ここは栄養士として、はっきり書いておきます。

青汁を1包飲んだからといって、その日の野菜350gが達成されるわけではありません。
足りない分を少し埋めるための補助であって、食事の置き換えではないのです。

厚生労働省が健康日本21で野菜の目標量を定めたときにも、特定の成分を強化した食品に頼るのではなく、基本的には通常の食事から摂ることが望ましい、という考え方が明記されています。

持病があって薬を飲んでいる場合は、自己判断で始めないでください。
成分によっては薬の働きに影響することがあります。
迷ったら主治医か薬剤師に確認してください。
国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報で、素材ごとの情報を調べることもできます。

まとめ

単身赴任の家族に何を送るかは、栄養の正解より生活の正解で決めたほうがうまくいきます。

置ける大きさか。
手間が増えないか。
本人が実際に使うか。

この3つを通ったうえで、足りない野菜を少しでも埋められるものを選ぶ。
私はそこに落ち着きました。

送ったものが空になって「また頼む」と連絡が来たときが、いちばんほっとします。
完璧な食事を届けることはできませんが、届くたびに少しだけましになる。
遠くにいる家族にできるのは、たぶんそのくらいです。